Re Another Life

アニメや音楽に始まり哲学など

2020-01-01から1年間の記事一覧

フェミニズムを学ぶのは端的に言って「楽しい」 ~自己破壊と再構築としてのフェミニズム~

私は生物学的に男として生まれ、社会的に男として育てられたごく一般的な人間である。性自認も男だと思っていたし、恋愛対象も女性であった。 そんな自分が大学院に入ってから初めて学問としてのフェミニズムやジェンダー学に触れた。そしてその内容は僕に大…

『ヘレディタリー 継承』は家族の映画などではない 不快なものとしての神秘主義

今年志村けんさんがコロナウイルスに感染して亡くなったというニュースを聞いた時、私たちが受けた衝撃の裏には「命は金で買える」という根拠のない思い込みに対する裏切りがあるのだと思う。「あんなに有名でお金も持っている人がまさか急に」という会話が…

鬼滅の刃が「男に生まれたのなら云々」と言って炎上しない理由

パズドラで『鬼滅の刃』コラボがあるので予習しておかねば、とアニメ版を4話まで観たのですが、あまりにも精神的によろしくない内容だったのでギブアップしてしまいました。 この記事ではなぜ鬼滅の刃が炎上「しなかったのか」を考察していきたいと思います…

5ツイート分くらいの『John Wick Parabellum』感想

後光みたいに銃が並んでるのが面白すぎる ・骨董品の銃、ナイフコレクション、乗馬などレトロなモチーフが冒頭を彩る。 ・肉感的でエロティックなダンサーの肉体と剥がれ落ちる指の爪、美の両極的な性質が1シーンに詰まっている。印象的なシーンだ。 ・モブ…

ひぐらしのなく頃に業 第一話の「痛さ」の正体 キャラクターたちの演技感

「ひぐらしのなく頃に業」一話を視聴し、そのあまりの滑りっぷりとイタさに衝撃を受けてこの記事を書いています。「ひぐらし」については最初から最後まで漫画版ではありますが履修済みです。魅音がベッドから這い出て来るシーンがトラウマです。 あまりの滑…

ホラーにおける ”汚さ” と ”未知” のつながりについて あるいはヒューマンホラーと宗教の関係性について

ホラー作品を観たりプレイしていたりすると汚さという要素が散らばめられていることに気が付きます。不潔な場所、異形の化け物、血や臓物などがそれです。そう考えると清潔なホラーというのはあまり考えられないのではないでしょうか。そしてホラーの条件に…

劣化も無化もせず、ただ積み上がり忘れ去られる映画レビューの繋ぎ止め

ネットに放り投げた文章は自分で投げたのにもかかわらず、同じ自分が書いた新たな文章の積み重ねによって忘れられ埋もれていきます。それでもデータとしての文章はそのまま残ります。誰にも見られないだけでそこには存在しています。観察されない現象は存在…

Randonautica(ランドノーティカ)のホラーな効能について

Randonauticaとは 今海外で「Randonautica(ランドノーティカ)」というアプリが話題になっている。このアプリは現在地から徒歩でだいたい一時間以内で行ける場所をランダムで指定してくる。ユーザーは指定された場所に出かけ探索することを促される、つまりは…

西谷啓治 西田哲学をめぐる論点(1936) 山内、高橋、田辺の西田哲学批判を通して

「西田哲学に対する有力な批判の二、三を取り出し、両者の相折衝する場面をなす若干の論点を、一応、問題論的に検討してみるのが、この小篇の意図である」(p.164) この論文「西田哲学をめぐる論点 —山内、高橋、田辺諸博士による批判の考察—」(1936)は上にあ…

狂ったスタローン 『ラストブラッド』

『ランボー』から38年、前作『最後の戦場』から12年の時を経てランボーシリーズ最新作にして完結作『ラストブラッド』が日本でようやく公開された。 ランボシリーズはPrime Videoに追加されたことをきっかけに全過去作を予習して映画観へと向かった。自分を…

ツイフェミという蔑称とフェミニズムの違いについて

ツイフェミ(良い表現ではないので以下文脈によってはツイと略して記す)と呼ばれる人たちの言動は、暴動という形で抗議する黒人のそれと同じだと考えられる。 彼らはなんらかの厳密な理論を持って暴れているのではなく、これまで自分たちが被ってきた不平等や…

『ハロウィン』(2018) 殺人鬼マイケルにおける性

『ハロウィン』(2018) ハロウィンシリーズ一作目の40年後を描いた作品。実際に『ハロウィン』(1978)から40年経っているのに加えて、キャストがそのままということで話題となった。 この記事では殺人鬼マイケルの仮面の下に隠された、暖かいとは言わないまで…

ダメ人間論 ~素晴らしきダメ人間の称揚~

突然だが僕はダメ人間が好きだ。映画を見るときには「どんなダメ人間が出てくるのか」という視点で胸を昂らせている。『万引き家族』のお父さん(というかリリーフランキー)や、『100円の恋』のボクサーなんかが最高だなあと思う。 しかし、そんな劇的なダメ…

塵芥に消え失せる映画レビューの繋ぎとめ

SNSに投げた文章は膨大な数の他の文章によって相対化され、その価値は常に小さくなっていき、いずれ無同然となります。デジタルタトゥーとはよく言ったものですが、そんなものは炎上か一部の特権階級だけが享受しうるものです。映画レビュー置き場、第二弾で…

僕は人の名前を覚えられないし、覚える気もさらさら無い

今回は人間の名前を話題の端緒に記事を書いていきます。 僕は人間の名前をとことん覚えられない。高校の時に好きだった女の子の名前を覚えられず、何十回と会っている友達の名前が覚えられず、担任の先生の名前が覚えられない。先輩・後輩の名前も覚えられず…

『文化と両義性』 昼と夜のメタファー・呪術の失敗・対立物の一致

山口昌男の『文化と両義性』を図書館で借り付箋だらけにしたものの、返却期限が近づいてきたので、付箋でチェックした部分を本文の引用とともにここに残しておく。主に神話における事象を扱っており、自分のような全くの神話の素人でも楽しく読むことができ…

沖に流れ去る映画レビューを拾って繋ぎとめる

最近Filmarksという鑑賞した映画を記録しておけるウェブサイトを使い始めました。僕がこの短い人生で鑑賞した映画は204本らしかった。記録用とは言うもののそこに投稿した感想は、時間がたつにつれて膨大な情報量によって沖に流されネットの海に消えていくの…

ゲームプレイと演出シーン間の境界融解 サイコブレイク

2014年にリリースされた「サイコブレイク」というゲームがある。このゲームはバイオハザードシリーズを生み出した三上真司氏がディレクターを務め作りあげたサバイバルホラーゲームである。独特の世界観と優れたキャラクターデザイン、ホラーストーリーにも…

自分の裸を完全に認識することの難しさと現代哲学の潮流

必要最低限のスペースで一人暮らしをしていると、自分の裸を見る機会が少ないことにふと気がつく。 トイレと風呂、洗面所が一体となったユニットバス空間には洗面用の鏡しかなく、自身の裸は上中下と身体を3等分したうちの上1つしか見えない。 また風呂に入…

フェミニズムをめぐるネットの議論がなぜ不毛なのか

ネットにおけるフェミニズムをめぐる言説は両性同士のフォビアの道具に終始している。異性のいずれかを悪者にするこの対立はフェミニズムなどではない。 フェミニズムは社会学という立派な学問領域に属するものとして議論されているのであって、ネット上の彼…

でびっち追悼配信分析 恐怖とでびでび・でびるの実在

2020年2月7日23時、予定を一時間遅らせて、でびでび・でびる(敬称略)のチャンネルで「でびっち一周忌 追悼特別番組」が放送された。そも、でびでび・でびるとは何ぞやと思われるかもしれないが、そこはこの記事の前提知識として持っていることを想定して書く…

人は真夜中に飲み会を抜け出すと「おばけ」になる

2019年年末のある日の夜、僕は飲み会がつまらなさ過ぎて途中で離脱し街をさまよっていた。真夜中の午前二時、家に帰る手段はない。冷たい風と雨をしのぐため静まり返った街を歩く。しばらく滞在できる場所を探しているとだんだんと二つの事実に気が付いてき…

『パラサイト』好きなシーン

先日2020年1月10日に日本で一般公開された『パラサイト 半地下の家族』(韓: 기생충)を観てきたので良かったシーンを挙げる。映画評のようなものを書こうとしたが「そんな単純なものじゃないだろう」と挫折したのでこの単純な投稿に至る。ネタバレはある

明けてますよ2020年 勉強は本当に「良い」のか

既に年が明けて5日。皆さんはなにをしていましたか。普段時間がなくて読めない本を読んだ?ゲームをした?映画を観た?ちゃんと文化的な生活を送りましたか?