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神の現存在の論証 カント 第二部 第六考察 Part 2 人間の五段階

カントはこの第六考察を終わるにあたって世界のうちに存在する完全性(統一性)についての哲学的説明を全五段階に分けて説明しようと試みる。これは人間の世界に対する考え方(世界観)の発展を叙述した考察とも取れます。

 

第一の段階:人間は自然の現象を全て神の手によって為されたものと考え、その証明に哲学を用いる。

 

第二の段階:人間は世界を宇宙の創造以来ある目的に向かって進み続けているという目的論的世界観を考える。カントはノアの洪水を神による裁きであるとする見解をこの考えの例として挙げる。カントによるこの超自然的な思想に対する考えはこちらの記事で。

http://annieareyou.hatenablog.com/entry/2018/05/31/013515

 

第三の段階:人間は自然の各部分を神が創造の際に直接配置したものとして考える。これはPart 1の後半部分がそれに該当します。

 

第四の段階:人間は一般的な自然法則によって説明しきれないと十分に確認する前に、それが神による配慮の産物であると考える。例えば草木が緑色なのは緑が人間の目に優しいからと神が配慮した、と考えるのがそれである。この場合「グリーンランドの住民は雪で盲目になる必要があるので雪眼鏡をかけなければならないといって講義しなければならない」(カントジョーク)。

 

この段階には西洋社会、もっと言えば人間という種を世界の中心と捉える傲慢な思想が根付いている。カントが明確に批判したのはこのような差別主義的な観点からではないが、この指摘は彼が客観的な視点を持っていることを裏付ける。

 

第五の段階:この段階において自然に対する哲学的精神は元も豊かに実る。ここでの方針は決して超自然的現象や、自然の技巧的秩序(神の配慮)を否定しない。しかし自然の統一性を最も重視し、ただそれだけで全てを説明しようと試みる。

 

結局はカントがこの著作で言っている「自然の統一性」の重要性が強調されます。はっきり言ってさらに発展した現代の思想的状況から見れば五段階では足りないので真に受けないように。