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神の現存在の論証 カント 第二部 第七考察 宇宙生成論

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第七考察は宇宙生成論です。この考察は特に理論的な哲学というより、自然科学的です(この2つを区別することに一家言ある人は多いと思いますが)。そしてここで述べられているのは200年以上前のカント個人の仮説です。科学的知見とは基本的に時代が進むごとに正しさに近づいていくという常識的な観点から、この第七考察はカントの狙いを引用して終わろうと思います。

 

自然の生成を探求しようとすれば、宇宙の構造が成立した状態、現在なお単純で明白な法則に従って続けられている運行が開始されたときの状態を把握しようとつとめる方が他のどのような原因を探求するよりも明白で容易だということができよう。

 

(中略)

 

 私は一般的な力学的法則に従って宇宙の起源を説明してみよう。私は自然の全秩序を説明するのではなく、自然の骨組みを作っている天体とその軌道だけを説明する。

 

(中略)

 

ひとびとは、このように大きな対象を扱うには一般的自然法則を超えたなんらかの技巧が必要だという偏見を根強く持っているのである。

 

つまりはカントが言いたいことは

 

1、自然の法則を探りたければ宇宙の始まりを辿ればよい。なぜなら最初というのは得てして単純なものだから。

 

2、宇宙の始まりというような大きなテーマであっても自然の法則に即しているのだから超自然的な法則は必要ない。

 

という2点にまとめられる。これは前の考察から散々述べられた自然法則の一般性という理論を実践してみたという感じでしょうか。彼が述べる宇宙生成論を論じる理由というのは極めて正しい。最初の出来事が物事の原因かつ最も単純であるという発想は現代のデスクワークでも適用できます(忘れがちだけど)。

 

もし自然法則の始まりが宇宙の始まりと同義であればの話ですが、と言い始めると無限後退パラドックスが始まるので今回はやめておきましょう。

 

カントの宇宙生成論が気になる方は『カント全集第二巻』(理想者刊行)をどうぞ。